デンマーク人は、いくつになっても誕生日を大切にする。新聞にある「記念日コーナー」には、家族などの出す「OOちゃん、お誕生日おめでとう」「わたしたちの大好きなおばあちゃん、すてきなママ、そして愛する妻OO、お誕生日おめでとう」といった広告がいつも載っている。
10、20、30才などの「代替わり」、特に50才という「大台」に乗ったときなどは、盛大に祝うようだ。髪の薄い紳士がにっこりほほえんでいる写真にそえて「O月O日は、わたしの50才の誕生日なので、わが家を1日開放いたします。お茶とケーキを用意して、お待ちしています」ということばのある広告を見たこともある。
学校でも、誕生日祝いをする。子どもたちは、自分の誕生日には、キャンディーやケーキなどを学校に持ってきて、同級生にくばる。クラスみんなでお菓子を食べ、誕生日の歌をうたって「おめでとう!」という。誕生日の子のうれしそうなこと。
校長先生の50歳の誕生日のときは、学校の生徒全員がキャンディーを1本ずつもらい、校庭で歌を歌って「おめでとう!」と叫んだそうだ。
誕生会もさかんだ。誕生会には、クラス全員、それが無理なばあいには、女の子全員、男の子全員といったようによぶ。招待状は、学校でくばることがおおい。
わたしの子どもたちも、しょっちゅう誕生会によばれた。招待された子は、10〜20クローナ(200円〜400円)ていどのものか、手作りのプレゼントを持って行く。1クローナ硬貨をじゅずつなぎにしたり、大きなダンボール箱に10クローナ硬貨を1個埋め込んで隠したもの、などということもあった。アイディア勝負、という感じだ。
低学年の子どもたちの場合は、平日、授業が終わるとすぐにお誕生日の子の親に連れられてその子のうちに行き、いっしょに昼食を食べ、ゲームなどをして遊んでから、ケーキを食べ、また5時ごろまで遊ぶ、というパターンが多かった。
5、6年生になると、誕生会の時間がずっと遅くなる。夜、6時過ぎに始まり、9時半〜10時に終わるのが普通で、泊りがけで騒ぐ、というときもあった。担任の先生は、「子どもも12歳くらいになると、おとなになった気分を味わいたくなるものだから、夜に出歩いたり、遊んだりする自由があるのは、だいじなことです」という。 治安がよくて、夜に出歩いても、危険でないということもあるだろう。それでも、11、2才の子が夜遊びするのを奨励するなど、日本では考えられない発想だと思う。
そういえば,学校の掲示板に貼ってある「青少年クラブ」のポスターには、こうあった。 「11歳から17歳までの子、大歓迎!ソーダ水ディスコ、ロックミュージックなどで、もりあがろう!毎週金曜夜7時半から11時・市体育館にて」
思春期にさしかかった子どもたちの欲求を、自立への道と理解し、はじめからきちんと認める。このほうが、危険を恐れてこまごまと規制するよりも、かえって彼らの成長するエネルギーを非合法な方<向に向かわせずにすむのではないだろうか。
デンマークの子どもは、10才くらいまでは、日本の子どもよりずっと幼く、子どもらしい感じがするが、それを過ぎると、急におとなっぽくなる。14、5才になると、意見や行動など、もうほとんどおとなと変わらないようにしっかりしてくる。
小さいときから、家庭や社会、学校で、自分の意見を言う機会の多いこと、自立しようとする力を妨げるものが少ないことのためではないか、と思う。
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