「テロリストはアメリカの繁栄の象徴を攻撃した。しかし彼らは繁栄の源には手を触れていない。アメリカは国民の勤勉さと創造性、そして進取の気性によって成功を収めているのだ。」
アメリカの軍事力の本質的な役割を再確認すべき時が来ている。我が国は課題を乗り越えて防衛力の構築および維持に努めなければならない。我が国の軍隊の最優先事項は合衆国の防衛である。効果的な防衛のために我が軍がしなければならないのは、
合衆国軍隊の比類なき軍事力と前線基地駐留は世界で戦略上最も重要な地域の平和を維持してきた。しかし、我々が直面しなければならない脅威と敵は変化し、それに対応して我が国の軍隊も変わらなければならない。冷戦時代に大規模な軍隊を抑制するために編成された軍隊は、いつ、どこで戦争が起こるかということよりも、敵がどのように戦いを仕掛けてくるかということに、より重点を置いた構造に変える必要がある。我々は多くの作戦上の課題を克服することにエネルギーを注いでいく。
アメリカ軍の海外駐留は同盟国や友好国への合衆国の責務を示す最も大きな象徴である。我が国は自国の防衛および他国の防衛のためには武力の行使も厭わないという姿勢をとることで、自由を支持する力の均衡を保つ決意を表明しているのである。不安定性と戦い、我が国が直面する多くの安全保障上の課題に対応するために、合衆国はアメリカ軍の長距離展開のための一時的な基地利用の協定に加えて、西ヨーロッパおよび北東アジア内外に基地および駐屯地を必要とする。
アフガニスタンにおける戦争以前には、これらの地域は不測の事態が起こりうる主要地域のリストの中でも下位に位置づけられていた。しかし、短期間のうちに、我が国はあらゆる部隊を使ってその遠方の国の至るところで軍事行動を展開しなければならなかった。わが国は、高性能遠隔探査や長距離精密照準爆撃能力、そして組織構造を変革した演習部隊と遠征部隊といった軍備を開発することによって、今後さらなる同様の配備に備えなければならない。このような広範囲の軍事力には合衆国の本土防衛能力、諜報活動を遂行する能力、遠隔戦域へのアクセスを確保する能力、そして大気圏外での重要な米国のインフラと資産を保護する能力をも含まなければならない。
軍隊の改革は、戦争への新しいアプローチの試みや、共同作戦の強化、そして合衆国の諜報機関の優位性の利用や、科学および技術の十分な活用にかかっている。さらに、我が国は国防総省の運営、とりわけ財務管理方法や徴兵と兵員維持の方法を変えなければならない。テロに対する臨戦態勢および戦闘能力を維持する一方で、最終的な目標は、大統領に広範囲に及ぶ軍事的選択肢を与えることで、合衆国や同盟国、友好国に対する攻撃やいかなる形態の脅威をも阻止することである。
我々は抑止が失敗する可能性があることを歴史から知っている。さらに抑止することが不可能な敵が存在することも経験から知っている。合衆国は、敵が国家であろうと非国家主体であろうと、敵による合衆国や同盟国、友好国に対してその意志を強制しようとするいかなる企てをも打ち負かす戦力を保持しなければならないし、また保持するつもりである。我々は責務を果たし、自由を守るのに十分な戦力を保持し続ける。我々の軍事力は、将来の敵が合衆国の戦力に勝ること、あるいは匹敵することを目指して軍備増強に走ることを思いとどまらせるに足る、強力なものである。
諜報機関およびその活用方法は、テロリストや合衆国に敵意をもつ国家による脅威に対する我が国の防衛の最前線となるものである。諜報機関は、ソビエト・ブロックのような大規模で固定された対象についての膨大な情報の収集という優先事項に対応して設計されていたが、現在は、さらに複雑でとらえどころのない対象物を追跡するという課題に取り組んでいる。
我々は諜報能力を変革し、このような脅威の性質に対応可能な新しい能力を構築しなければならない。諜報機関は我が国の防衛と法の施行制度と適切な形で統合されなければならず、また、我が国の同盟国、友好国と調整されなければならない。我々は、我が国がもつ諜報能力を保護することで、敵に最も効果的な奇襲攻撃の方法に関する知識を与えないようにする必要がある。我々に危害を与えようとする者はまた、奇襲の利点によって、我々の防御と反撃の選択肢を制限し、損害を最大にしようとする。
我々は、国家と本土の安全保障のために統合的に脅威を測定することができるよう、諜報上の警告と分析を強化する必要がある。外国政府および外国団体によって引き起こされる脅威は合衆国内で実行される可能性があるため、我々は諜報機関と法の執行の間での情報の適切な融合を確実にしなければならない。
この分野を主導する取り組みとしては以下のものがあげられる。
合衆国政府は合衆国の国益を守るために軍事力に依存しているが、他国と協力して行動していくためには外交に重点を置いていかなければならない。我々は合衆国の外交政策が確実に成功するために十分な資金が国務省に配分されるようにする。国務省は他国政府との二国間関係の継続において主導的役割を担っている。また、この新しい時代には、国務省職員と国務省は非政府組織や国際機関とも巧みに連携することが可能でなければならない。主に国際政治の分野の教育を受けている役人は、理解力の範囲を広げ、公衆衛生、教育、法の執行、司法組織、民間外交を含む、世界各国の国内政治の複雑な問題をも理解していかなければならない。
我が国の外交官は複雑な交渉や内戦、その他人道的な大惨事の最前線で任務を遂行している。人道的援助の要件がよりよく理解されるようになったが、我々は警察、裁判制度、法律、地方の政府機関、そして選挙制度の構築に資するだけの能力も備えなければならない。これらの目標を達成するためには効果的な国際協力が必要であり、合衆国は自らの責務を担う準備が整っている。
我が国の外交機関は、他国と連携していくことができるよう調整をおこなっていかなければならないが、それと同様に、情報公開活動に対して、従来とは異なる、より包括的なアプローチをとることで、世界各国の人々がアメリカについて学び、理解してもらうことを目指す必要がある。テロとの戦いは、文明の衝突ではない。しかしテロとの戦いは文明の内部の衝突、イスラム世界の未来を賭けた戦いを露呈した。これは思想間の闘争であり、アメリカが卓越している分野である。
世界の安全保障のために責務を果たし、アメリカ国民を保護するという我々の取り組みが国際刑事裁判所(ICC) による取調べや尋問、訴追の可能性によって阻害されることのないよう必要な措置を講ずる。ICCの管轄権は我が国には及ばないし、我が国はそれを受け入れない。我々は、ICCからアメリカ国民を保護する多国間および二国間協定を妥結するといった手段をとることで、軍事行動や協力活動における面倒な事態を回避するために他国と協働していく。我が国は、米国の軍人および公務員の保護を保証し、強化することを目的とする条項を含んでいる米国軍人保護法を全面的に施行する。
我が国は次年度以降、国家安全保障に対して政府予算を適正な水準および配分で確保するという困難な選択をおこなうことになろう。合衆国政府はこの戦争に勝つために防衛力を強化しなければならない。我が国の最重要優先事項はアメリカ国民のために本土を防衛することである。
今日、国内問題と外交問題の区別はなくなりつつある。グローバル化した世界では、米国の国境を越えたところで起こる出来事が米国内に一層大きな影響をもたらすのである。我々の社会は世界中の人々や思想、商品に対して開かれたものでなければならない。自由や我々の街、輸送システム、そして現代的な生活など、我々が最も大切にしているものの特徴はテロ攻撃の対象となりやすい。9月11日の攻撃に責任をとるべき者が裁判にかけられた後も長くこの攻撃の対象となりやすい状態は続くであろう。時がたつにつれ、これまで陸軍、空軍、海軍のみが入手することのできた破壊の手段を、個人が入手可能となる可能性もある。これは新しい生活状態である。それでも我が国はそのような状態に適応し、繁栄を続けるであろう。
指導力を行使するにあたっては、我が国は友好国および協力国の価値観、判断、利害を尊重する。我が国の利益や独自の見解が求められた際には単独で行動する用意もある。特定の問題に対して意見を異にする場合には、我が国の懸念の根拠を率直に説明し、実行可能な代案を編み出すよう努める。我々は同盟国や友好国との間のこのような意見の相違によって、共通の基本的利益と価値観を守るという我が国の決意が曖昧になることのないようにする。
最後に、アメリカの力の源泉は自国内にある。それは国民の技術、経済の活力、そして諸機関の回復力にある。多様化した現代社会は、固有の、野心的な、企業家精神に溢れた活力を持っている。我が国の力はそのような活力を活用するところから生まれてくる。我が国の国家安全保障はまさにここから始まるのである。