渡辺鋼さん 石川島播磨重工業社員
「人権回復を求める石播原告団」団長
「人権アクティビストの会」副代表
はじめに
みなさん、こんにちは。 私の勤めているところは、石川島播磨重工といいます。あまり名前の知られている会社ではないんですけれども、もともとは、造船が主力だったんです。でも今は造船の比率は10%を割ってまして、一番の中心は、航空宇宙事業本部という、航空機のジェットエンジンの製造・整備、あとはH2ロケットですとか、宇宙開発のロケットのエンジンですとか、そういうものが中心になっています。きょうお話をするのは航空宇宙事業本部の話が中心です。
石川島播磨重工では、防衛生産が大きな比率持ってます。全社的に言うと15%くらいが防衛発注、軍事生産ということになりますけれども、ぼくのいる航空宇宙事業本部でいいますと、もう7割ぐらいが自衛隊の戦闘機とか軍用機のエンジンの生産。ほとんどがアメリカのGE(ジェネラルエレクトリックス)ですとか、そういうメーカーのエンジンのいわばライセンス生産です。私たちの職場は、軍事生産が7割ぐらいを占めている事業部ですので、私たちの労働組合は、せっかく呼びかけていただいても、さっき村中さんがおっしゃった20労組には絶対入らないような労働組合なんです。
「連合」全体としては一応この有事法制に対して批判的な見解を持っているということになっていますけれども、その中のかなりの部分、三菱とか石川島とか、軍事生産企業の労働組合は、みんな、要するに軍事生産が、国内だけでなくて輸出できるようにしてほしい、それでなきゃもたないというような、兵器の輸出を求めるほどの状態です。 したがいまして、20労組の集会には、ぼくも行きましたけれども、労働組合として行けないんですね。一個人としてしか行けない、というような状態です。
「兵器や兵員を運ぶのはいやだ」「戦争に協力するのはいやだ」といって、20労組のみなさんが、立ちあがってよびかけているのに、兵器を作る労働組合は、戦争協力の方向です。ほんとうは兵器生産の職場から、Noと言わなくてはならないときに・・・。集会の主催者のなかに、ぼくたちの組合がいないということに、ほんとにくやしい思いがしています。
「戦場に派遣される」
一応、会社についていえばそういうことなんですけども、今、会社でどういうことが起きているか。 ここに「戦場出張はいやだ」というちらしがあります。昨年の暮なんですが、私のところに「会いたい」と電話がかかってきました。私たちの工場は、西東京市といって、西武線で田無駅を降りて。まあ田舎なんですけども、みんなあの辺に住んでいて、顔見知りなんかが多かったりするんで、駅前でなんかで会えないってことで、新宿の雑踏の中で、喫茶店で会ったんです。
その時に、「実は自分の職場で、こんど、インド洋に派遣する人のリスト作りが進んでいる」、ということなんですね。というのは、昨年の11月に、テロ特措法というのができて、アメリカのアフガンに対する戦闘を支援するために自衛隊が出ていく。自衛隊が出ていったら、「海外に出動中の自衛隊に、支援のための技師を派遣して欲しい」という話がすぐ、おっかぶさるようにきたというのです。で、さきほど村中さんからもお話ありましたけども、私どもの、兵器生産の業界の常識はですね、自衛隊さんというのは、武器を使って準備を、戦争の練習をしているけども、修理したりメンテナンスしたりというのはからっきしだめなんですね(村中:「すいません 」(笑))。 で、私どもが、行って整備したり直してさしあげないと動けない。というのが、私どもの職場の誇りでもあるわけなんですよね。「俺たちがいなくちゃだめなんだ」っていうのがね。
ですから、今、リムパックっていう演習をハワイでやってますけどもね。そういうところにも、得々として行くんですよね。それから、自衛隊の基地なんかにも、常駐して、戦闘機のエンジンの整備ですとか、そういうこともやるようになっているんです。 ですから、「今度はインド洋に出ていったから、整備頼むよ」、「あ、そうですか」ってなもんよね。で、当然のように行けと言われたわけですけども。相談に来た方も、そういう誇りを持っていらっしゃる方だったけれども、「ちょっとこれは違うだろう」と。今までは、整備っていっても、演習とかの程度だった。こんどは、戦闘行為に結びついているだろうと。
で、さっきちょっとお話ありましたけども、「これで出てって、もし戦死したら、労災? 戦死?」。はっきりしてない。そういう問題なんですよね。
上司たちは、けっきょく「君、こんど、名前載せとくからな」って感じできたわけなんです。まあ、使命感はあるけれども、自分の命や安全の問題を、国内のたとえば浜松基地に行けというのとね、おんなじような扱いで、ポーンとやられる。それに対して、「違うだろ」っていうことが発端なんです。 しかしまあよく話を聞いてみれば、自分にももう高校に行く子どもがいるとか、家族との暮らしはいったいどうなるんだとか、そういうことは当然あるわけです。そういう話でした。
マスコミに取り上げられて
私たちもその時話を聞いて、このビラを一月の末に作ったんですね。10万枚作って、えっこらえっこら撒き出しました。3万枚ほど撒いたら、朝日新聞から取材の申し込みがありました。「これ、どういうことですか」と。実は、これ朝日新聞のトップに5月4日付けで出たんですけども、取材受けたときは、それほどとは思ってなかったんです。記者も「大事な問題ですね」と言って、その後裏をいろいろ取ったりなんかしてくれたんです。
そうしたら、5月4日、ちょうどゴールデンウィーク中に、一面のトップにどーんと出た。そうしましたら会社は休み中なんだけど、役員同士が連絡取り合って大騒ぎだったそうです。誰がやったんだって犯人探しが始まったり、いろいろありました。 まあ、直接話をしたのは渡辺だろうということはわかっているんですけども、結局それを漏らしたやつがいるし、ここにありますように、もうリストが出されているというのであわてたのでしょう。
そのリストはその人が持って来てくれたんです。だから新聞社も「こりゃ間違いない」ということだったんですよね。ですからその方の勇気っていいますか、よくぞ相談してくれたと思ったんです。
私らは、労働組合じゃないし、力はないです。さっきも言ったように、労働組合のところに行ったって、なんにも取り上げないんです。かえってにらまれるだけで損だということで、僕らみたいな者に相談があったと思います。 僕らみたいな者とはどういう者かといいますと、要するに職場の中で、ちゃんと主張すべきことをやってるわですが、そういう者に対しては、まあ、いろんな迫害がすごくあるわけなんですね。ちょっと話が前後しちゃいますけれども、そういう迫害に対して裁判なども起こしている我々ならば、話を聞いて問題にしてくれるだろうということで、相談があったわけです。
で、このビラを撒き出して、で、けっきょく新聞の報道もあった。職場の中ではすごい緘口令っていいますか、リスト作りについても、一切それを言っちゃならないということで。職場の人たちの受け止め方っていうのは、「もし行けと言われたら、断れない」。で、自分も黙って行くし、家族も黙ってなきゃなんない。職場にも、「行く」と言ってはいけない。 緘口令にもとでは「何々さんがこんど海外に行くことになりましたので壮行会開こう」とかね、「けっこう危ないとこ行くからね、がんばってね」なんていうことにはならないわけです。「黙って人知れず、行くということになるんだなあ」しかし「人知れず行って、人知れず死ぬんじゃたまらん」ということもあって、相談になったわけです。
ぼくらも予想外の展開だったんです、ビラを出すのがやっとで。それがまあ、結果として、こういう形でマスコミにも載るということになったんです。 で、そのあと共産党が国会で取り上げた中でですね、中谷防衛庁長官が「いや、民間人の現地派遣は、これ当然必要なんだからありえます」ってことを答えたんですよ。それはうちの当該職場にとっては大ショックだったんです。「やっぱり行かされるんだ」って。
でも、「今までは人知れず行かされると思っていたのが、これだけマスコミも取り上げてくれてる、世論も知っててくれてる、だから、ここまでくれば、防衛庁も会社もあんまりひどいことはできないんじゃないか、リークもしやすくなるんじゃないか」というようなことで、ホッとした雰囲気が当該の職場に流れたっていうんですね。で、私のところにも、「あんたたちに相談してよかったよ」というような話がいただけて、まあよかったかなというふうに思っているんです。そういう経過がありました。
法律がなくても業務命令で行かされる
この問題というのは、今日テーマになっております有事法制が成立しなくても、業務命令で行かされるということなんですね。
で、私らも問題にして、本社に見解を問いただしに行ったんですけども、会社はこうなんですよね。「要請があったわけじゃない」、「要請があれば検討する」ってとぼけてるんですよね。――実際はもう40数人の名簿も出して、その人のパスポートナンバーも提出してるんですよ。――で、要請があった時はもう遅いじゃねえかって言うんですけども、「要請があれば、防衛庁は大事なお客様だから、前向きに検討する」と。じゃあ、どういうふうに検討してどうするんだというと「いや、それは仮定の話だから答えられない」とこう逃げられちゃってるんです。
で、こんどは防衛庁に対して「どういう法的な根拠で要請をするのか」というふうに、追及したんですね。そしたら、防衛庁は「あくまでも、たんなる防衛庁と民間との自由な派遣契約である。それは、防衛庁が強制しているわけではなくて、相手の企業が『うん』と言ったからできることであって、『うん』と言ったからには、その相手の企業は労働者本人とも労働組合とも十分な調整をして合意の上できているんだろうから、だからなんら問題もありません」、という理屈なんですよ。けっきょく、罰則付きで 強制しなくても、今、そういうことが平気でやれると踏んでいるんですよね。
ですから、さっきの話、少し戻るんですが、例の周辺事態法でも、兵器生産職場についてはですね、協力要請なんてことしないんですよね。ていうのはね、要請なんかしなくたって、もう業務命令ですいすいやらせられるって、折込済みの前提になっているんですよね。それほどやっぱり、会社の意のままに動く労働組合、会社の業務命令がそのまま貫徹する職場になっているのだと思うんです。
もの言えない職場に問題が
そういう意味で、今、有事法制という法律で、強制されるという事態がこれからできるというよりも、もう、ほとんどの多くの労働の現場では、戦争協力を受け入れざるを得ない事態が、実態として労使関係の中で作られているのに、働く人たちはものが言えない。上司が「これやれ」と言ったら、自分の仕事なのに「それはおかしい」と言えない状態に、今、大多数の日本の職場がなってきているんじゃないですか。やっぱりそこにね、今の深刻な現実があると思うんですよね。「もの言える職場」っていうことをぜひ強調したいんです。
みなさん生きていく上で、「自由にものを言えるっていうこと大事だし、そうじゃなきゃいやだ」って思ってらっしゃるけども、意外と「職場ってのは、仕事をやって銭を稼ぐ場所だから、そこでは『もの言える』ことより、ばりばり働いて銭稼いで、あとは家族や仲間と地域で自由にもの言って、暮らせればいい」、というような感じになりがちで、職場での人権とか、職場でものが言えるかどうかっていうこと、あんまり考えない人が多いんですよね。でも、やっぱり、これが日本の一番の基本ではないですか。
ま、ちょっと話が脱線しますけれども、もの言える職場だったら、雪印の牛肉偽装事件は生まれないんです。「おかしいじゃないですか」ってね、労働者が言えるわけですよ。また、薬害エイズのミドリ十字の労働者だって、知ってるわけですよ。あれやれば感染すると。それから、三菱自動車のクレーム隠し。あれもそうですよね。わかってて隠してる。
要するに、社会的な大きな犯罪、大事件っていうのは、みんなひそかにやるわけじゃないんですよ。みんな白昼堂々仕事として、業務として、やらされてる、やってるわけです。 でも、みんな自分がかわいいし、生きるために給料もらう、そういうことで、黙っているというのが、日本の多くの現実ですよね。まあ、そのチャンピオンが軍事生産職場ということですよね。
なぜものが言えなくなるか
で、じゃ、なぜそういう状態になっているのかということで、ちょっと私のこと話します。私は朝8時に会社に出勤します。まあ、工場ですんでね、事務系の職場ですけども。朝行くと、ぼくはいろんな人に挨拶をしますけれども、挨拶は、だれも返って来ないんですね。で、席に座りますね。・・・で、仕事がないんですね。・・・で、一日座ってるだけなんです。5時までなんですけど。まあ、それを17年ぐらいやってるんです。
それから、新入社員の歓迎会とか、暮の忘年会ですとか、いろいろ行事がありますよね。いっさい呼ばれないんですよね。毎年新入社員入ってくるんですよ。すると、「あの人と話さないように。口きかないように。目を合わすと、挨拶しなきゃならなくなるから、目を見ないように」と言う。 それが、このちらしの裏側にあります、えー・・・「口をきくな、目を見るな、行事に呼ぶな、香典受け取るな、昇格させるな、得意な仕事はまわりが覚えて取り上げろ」っていう。これ、ほんとにあるんです。で、なぜなのか。ま、私もつらいんですけど、要するに、それが見せしめなんですよね。 「渡辺みたいになりたくなかったら、会社の言うこと聞け、労働組合の言うこと聞け」。要するにそれしないと、ああなるよっていうことなんですね。まさかと思われるかもしれないんですけど。
で、なぜこういう状態になったかということなんですけど。ちょうど今から17年前のことなんですけども、当時石川島で7000人の人員削減という、まあ、リストラのはしりですよね。22000人ぐらいいた職場で7000人ですから、三人に一人やめさせられる。名目は希望退職だったんですが、やめさせると目論んだ人たちに対しては、仕事を取り上げて「おまえの仕事はない」。それでもやめない人に対しては、業務命令で「休暇をとって職安に行って自分の仕事を探すのがおまえの仕事だ」と言われて、むりやり休暇を取らされて、2日ほど休んで出社してみたら、自分の机も椅子もなくなってた。それでやっぱりもう切れちゃって、退職届だしちゃった。で、出しちゃっても、やっぱり暮らしのことだとかいろんなこと考えて、で、自殺した。私の友人でした。
私に対しても、「あんた、やめろやめろ」と、上司は何度も面談して迫りました。何度「もうお断りしております」「お話することありません」と言ってもね、「いや、あんた会社にいる限り業務命令だ」と。「面談は業務命令だ」、「こなかったら業務命令違反だ」と言われると、そういう時期ですから、その業務命令違反で懲戒解雇されてもつまらないので、まあ、面談室まで行きますよね。そうしたら「あんた・・」と、こうなるんですね。
ひどい人はもう何十回もやられてるんですね。それでもやめないと、会社の意を受けてやめさせようとする、「職制」っていいましてね――管理職じゃないんですよ、会社がやったことになるから。その1歩手前の人たちが、「なんでお前辞めないんだ」「あんたなんかいてほしくないんだよ」とかいって、昼休みなんかに数十人で取り囲んでつるしあげるとか、そういうことが、1986年の暮にありました。それで7000人やめさせられました。
そういうことの中で、ぼくは「おかしいだろ」ということで、何人かの人たちと一緒に声をあげ、辞めないでがんばった。そうしたら報復されて、それがあまりにもひどいんじゃないかということで、これまでも裁判やなんかいろいろやってきたんです。今、それでも解決つかないので、このビラのように「たたかってこそ明日がある」ということで、再び裁判を起こしながらやっています。この裏側の、原告紹介というなかで、まんなかへんに渡辺鋼とあるのが私なんです。 こういう見せしめは、私が憎くてやってるだけじゃないんですよね。もの言えぬ職場にしておかないと、兵器生産企業は維持できない。しかしそんなことが許されるはずありません。
もともと労働組合に、会社がぐうっと介入して会社の言いなりになる労働組合にしようとしはじめたのは、1960年代の後半から70年、まあ、みなさん生まれてらっしゃらないかもしれない時期なんですよ。で、その時になにがあったかというと、三次防が始まったんです。第三次防衛力整備計画。で、石川島播磨重工でも、軍艦をどんどん作るようになる。それから、ファントムという戦闘機のエンジンを生産するようになる。三菱重工ではその機体を作って、全面的にミサイルも戦闘機もというふうになってくる。第三次防衛力整備計画っていうのが、すごい勢いで始まった。
で、それに対して「兵器生産はいやだ、平和のための職場だ」っていう労働組合がいたら邪魔なんですね。それで、徹底的に そういう形で会社が組合に介入して、組合を「右傾化」といいますけれども、会社寄りに変えていく。 それでもおかしいじゃないかという人たちに対しては、とことん差別で押さえつけていく・・・という仕組みがどーんとできてきた。 戦争も非人間的ですけれども、兵器生産職場を維持するためにも、やっぱり非人間的にならざるをえないのです。だから、非人間的なものを国民におしつけるために、今回の有事法制も、戦場派遣の問題も出てきてるわけです。
防衛庁による身上調査
防衛庁の例の情報公開請求者のリスト作りの問題、ありましたよね。実は、茶色のちらしの裏にですね、『防衛関連企業にも身上調査』っていう記事は、実はこれは東京新聞の取材があって話したことですけれども、実は、防衛庁ってのは、ものすごい身上調査やるんですよ。ですから情報公開請求をした人の身上調査なんて当然のことなんです、彼らにとって。 で、オンブズマンだ、やれ受験生の母だとか防衛庁のリストにありましたけどね。あの程度で済んでると思ったら大間違いなんですよ。徹底して調査する。調査隊というのあるんですよあそこには。日ごろはドンパチやれないから、調査隊というのが一番機能していると思うんです。
私たち石川島播磨重工とか、三菱重工とか、そういう職場では、重要な軍事技術ですとか、日米安保条約に基づく軍事秘密防衛協定で、アメリカから指定された機密を扱う職場では、その人間についてはちゃんと承認を受けなくちゃいけない。で、その人間は承認を受けるために5枚つづりの身上調査書というのを書かされるんですよ。
それは、その職場で書かされる人にしてみると、「俺もいよいよそういう重要な仕事につけるようになった」って言ってね、やっぱり誇りなんですよね。で、書かされる内容は、2親等以内の親族・姻族の名前全部書いて、それから自分が生まれてからずーっとの住所だとか、要するにその人の経歴がさかのぼって全部調べられるような調書を出すんですね。
で、出す時にこう言われるんですよ。「あなたこれに基づいて、防衛庁が調査しますよ」「防衛庁は、たぶん、あなたのポストも見るでしょう。誰からどういう手紙が来ているか、どういう新聞を読んでいるか。・・・このさい左関係は整理したほうがいいでしょう」と。
ぼくがなぜこういうこと知ったかといいますと、友達で、そういう仕事につく人が何人かいました。その人はあわててぼくのところに飛んでくるなり、電話するなりして「渡辺さん、あしたからもう一切ビラなんか送らないでください」ということになるのね。
その一番最初にあったのが、1979年ごろで、ちょうどF15のエンジン生産が始まった――F15って戦闘機ありますよね――、あの時期です。で、その時期からちょうど、工場に日の丸が掲揚されて、朝、君が代が流れたりね、そういう時期があって。ぼくら反対して、しばらくすると、君が代は中止になりましたけれども、そういう身元調査はずうっと行われていますから、「会社で仕事をしようと思ったら、あの人たちとつきあわないほうがいい」って雰囲気にされてしまうんですね。こうして差別は当然という雰囲気に持っていかれるんです。
さらに、防衛庁が要求する身上調査だけでなく、石播自身がやる身上調査もあります。――軍事企業だけじゃなくてほかでもやってると思うんですけども――目をつけた人に対しては徹底的に調査します。私たちの地元の田無警察なんかとも情報交換しています。で、会社が作ったリストも実はひょんな機会から入手したんです。ある人がむりやり辞めさせられたんですね、で、私んとこ送ってくれたんです。
それによると、問題がある人については、毎年見なおして、これは地域でなにか活動していると、サークル活動をやってるとかですね。すると、危険度ランクアップ1とかね。そりゃもう、おそらく、地域まで会社自身が調べているっていうよりも、公安や警察の調査と交換しているように思います。
今、防衛庁もリストを作っている。会社もリストを作っている。警察も作っている。で、今、住民基本台帳ですか、作って全員背番号化する。ありとあらゆる情報のリストがその背番号に全部貼りついていく。そういう事態が進行しているんですね。
個人情報の使われ方
さっき言った7000人の人員削減という中でですね、私の友人でIさんて方なんですけれども、退職を迫られて「辞めません」と言ってた。そしたら、「Iさん、あなたのお嬢さん来年の春、高校卒業してどこどこへ就職が内定しているそうですね」と。もう内定してるにもかかわらず、「ちゃんと行けばいいですよねぇ」と言う。 「あんた辞めろ」と言っている会社がね、言うわけなんです。ということは、口では言わないが、「あんた、ここで突っ張って、会社の言うとおり辞めないなら」――もうその人は50なんぼですからね、「辞めないなら、あなたの娘さんの就職に累が及びますよ」ということなんですよ。Iさんは一瞬、「この野郎ー」と思って・・・、面接やってたのが、4階か5階の会議室だったらしいんですけどね、その人抱きかかえて一緒に窓から飛び降りようかと思ったぐらいね、くやしかったと言ってました。 やっぱり、汚ねえ、もう家族までね、自分だけだったらまだ我慢できるけども。
けっきょく、防衛庁が今作っている情報公開要求している人のリストっての、「ああ自分のプライバシーちょっと出されて気持ち悪い」なんてもんじゃないんですよ、その人が一番困る時に、その情報を使って徹底的なダメージを与えるわけですよ。黙らせるわけなんですよ。やっぱりこいつ辞めさせたいと思う時にそういうこと言うんです。そこまでして、労働者の人権を抑えつけて、兵器生産をしていく。それで、有事法制がなくても、戦争へ戦争へ、こう、みんなをかりたてていく現実が進行しているんです。有事法制を許さない闘いはこうした現実を許さない闘いだと思ってがんばっています。
罰則があるから、しかたがないから戦争に協力するだけじゃないんですよ。やっぱりね、自分の生き方や飯の食い方や仕事の上司との関係ね、そういう中でそうせざるを得ない、就職のためにちょっと妥協するとか、そういう中でみんなの少しずつの妥協が、こういう社会をね、なだれ打つように作っていくんだよね。で、そういう戸口に来ているような気がね、私はしてるんです。
ま、悲観的なことばかり言いました。でも、がんばれば道は開けるかな〜〜と思ってます。だから私たちも「たたかってこそ明日はある」を合言葉にたたかっています。以上です。
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